不完全な人間たち

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「……コーヒーのおかわりを、いただけますか?」  彼はハッキリとした口調でそう言った。そして空になっていたコーヒーカップを、指で少し押して、こちらに差し出す。  かしこまりました、と答えると、彼は微笑んだ。彼のもとに行くと、コーヒーカップを下げる。  その距離まで近寄った瞬間、彼の方から、何かミントのようないい香りがした。いや、そんな気がしただけかもしれない。  カウンターの奥で、新しいカップにコーヒーを注いで持っていくと、パソコンの前に置いた。 「……お待たせしました」  彼は顔を上げた。 「どうもありがとう」  湯気の上がるその新しいコーヒーに、彼は一口、美味しそうに口をつけて啜った。そして軽く味わうようにすると、うん、と一言、うなずきながら言って、 「やはり、ここのコーヒーは美味しいですね」  彼は、私の顔を見た。まあ、まんざらお世辞でもない様子である。 「……どうもありがとうございます」  なんとか営業用の笑顔を作って答えると、彼は満足げにまたパソコンに向かって、同じようにキーボードを打ち始めた。
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