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「これは他で、誰かに見せたのかね」  少しばかり期待の滲む目で魔女を見ていた子供は、その声音の固さに顎を引く。  この力をうっかり使ってしまったが為に、父と祖母に恐れられ、村八分に追い出されてしまったことを思い出していた。 「二度と、使うんじゃあないよ」  強い口調で魔女は言った。子供は小さく頷いた。  更に数年が経つと、子供は大きく成長した。歳の頃は十四、五だろうか。以前までは斧の使い方に難儀していた薪割りも、今では魔女よりも上手にこなすことが出来る。  立派に成長し、逞しい青年への道を歩んでいる子供とは違い、魔女の老いによる衰退は著しかった。  屈みこんでの作業が多い畑仕事も辛くなり、ほとんどの泥仕事は子供の役目になっていた。魔女はと言うと、魔法の力を借りて、ささやかなアクセサリーや帽子や手袋などの服飾小物の製作に勤しんでいる。これを売って、二人は金に変えているのだった。  畑仕事を終えて小屋に帰宅すると、魔女の姿がなかった。いつもならば、この時間になると魔女は竃の前で鍋を掻き回している。野菜の出汁がたっぷりと出たスープは定番メニューで、子供の大好物でもあった。     
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