正しく!

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社長の第一声。 「おめでとう! いや、ありがとうかな?」 ニコニコしながら手を差し出された私は 「え?え!?」 と、プチパニックになっていると 部長が慌てて声をかけてきた。 「握手!!」 咄嗟に握手をすると社長は満面の笑みで話をしてきた。 「入社してまだ日も浅いのに よく今回の取引を成功させたね! あの芸能プロダクションの社長は 昔からの付き合いだったけど 女性に目がなくてね! 嫌な思いはしなかったかな?」 確かに接待の時、セクハラされそうになったけど いつも間一髪の所でヤスが助けてくれてた。 偉い人達が笑いながら話をしてる中で私は 取引の間のヤスを思い返した。 気付くと私が動き安い様に仕事してくれていて。 辛い時、いつも盾になって助けてくれてた。 仲間同士でちゃんと 作業内容を伝えてくれていた。 ・・・いつも・・・ ・・・いつも・・・ 「そこでだ!」 社長の言葉でハッっとする。 「今回の功績を称えて 君を1課のチーフに昇進する! それとこれは今回の件での謝礼だ。 ボーナスとして受け取って欲しい。」 そう言って内側ポケットから 賞与と書かれた厚みのある封筒が出された。 私は迷わず頭を下げた。 「すみません! とても嬉しい限りですが、 どちらも受け取れません!」 頭をゆっくり上げると社長室にいる全員が キョトン顔をしていた。 私は何も考えず思うままに話した。 「理由は私1人の功績ではないからです。 仲間である先輩方のサポートがあったからこそ 無事にやり遂げる事が出来ました。 私1人だったらたぶん接待すら たどり着けなかったと思います。 ですから私1人で お礼を受け取る事はできません。」 我ながらなんてありふれた言葉だろう。 ドラマとか映画にありそうな台詞を言うなんて。 でも、それが今の私の本心だった。
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