期待

9/10
78人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
それからは今までよりかは頻繁に会った。 皆が帰ったオフィスや私の部屋、ヤスの部屋で 何回もした。 たくさんした。 そんな関係のまま1年が過ぎようとした時。 私の部屋に来たヤスを怒鳴り追い出した。 「俺、再婚する事になった。」 そんな事を言われて腹が立ったし 裏切られた気になってしまった。 なんで!?どうして!? 何回も頭を巡る言葉はそれだけ。 冷静になって考えたら 私達は何も言わなかった。 愛を確かめていなかった。 ただ欲望に身を任せて求め合っただけ。 部屋のドアを開け 冷静を装い話をした。 「どうしてそうなったの?」 精一杯だった。 「高3の時に付き合ってた奴でさ。 最近離婚したって連絡きて。 ほら、俺もバツイチじゃん? だから話合ってさ。んで会ったら流れて流れて?」 笑いながら話すヤスの顔を見れない。 胸が苦しい。 「・・・私・・・好きだったのに! ずっと・・・ずっと好きだったのに!」 感情的になった私にヤスは 笑いながらごめん。と言った。 1枚・・・ 1枚・・・ また1枚・・・ 私の中にある小さなガラスが組合さった部分が 徐々に徐々に割れていく。 突然、抱きしめてきたヤスが 最後だからと言ってキスをしてきた。 私にはもう抵抗するという発想すら出来なかった。 求められたままに動き 感情を持てないまま抱かれ 全てが終わって涙をながし そんな私を横目にヤスは帰っていった。 私は耐えれなかった。 転職してからもしばらくは辛かった。 連絡先も消せなくて。 半年が過ぎた頃、取引先が主催するパーティーで 真紀さんに会った。 お互いに近況報告をしていると パーティー会場でヤスを見つけてしまった。 私はたまらずエントランスに逃げてきたが 既に手遅れ。 ヤスに腕を捕まれた。 「何回か連絡したのになんで返事しねーんだよ! 勝手に会社も辞めるし! 勝手にまた引っ越してるし!」 私は何も言わない。 口を開けたら暴言が止まらないだろう。 そしたらパーティーが台無しになってしまう。 ひたすら我慢して会場が騒いでいる隙に ヤスの手を振りほどき走って逃げた。 必死に走った。がむしゃらに。 帰宅した私の顔には涙の跡が付いていた。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!