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1 とっておきの
抱きついていた瀬田がようやく離れてくれたので、秋川はソファーから立ち上がることが出来た。
瀬田の体重が掛かっていたので体が沈み、いい加減腰が痛かった。
大きな伸びをして秋川は、家庭用の小型ワインセラーが置かれているキッチンの片隅へと向かった。
「よし!今夜はおまえの出戻りパーティーだ。お祝いにとっておきのを開けてやる。明日、休みか?」
「はい」
「白がいいか?それとも赤か?ロゼと泡とは冷えていないんだが・・・・」
「本当に、何でもいいんですか?」
「あ、あぁ、もちろん」
何でもない様に返事をしつつも秋川は、瀬田がもし、じゃあ一番高いヤツで!と、ワイン好きではないが故の無邪気さで言い放ったらどうしよう?と気が気でなかった。
ちなみに、秋川セラーの中で一番のビンテージは2012年のイタリアの赤だった。
色合いも瓶もドッシリと厚く重い、力強い銘柄だった。万近くしたが結局、食べ物を何に合わせていいか判らずに寝かせ放しのままでいる。
いざとなったら、持ち込み(抜栓)料を払ってミクリヤで飲ませてもらえばいい。と秋川は考えていた。
上記の様にワインのことばかりを考えていたので、秋川は気が付かなかったのかも知れない。
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