彼女は

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彼女は

楽しくなってきちゃったんだよね、と不敵に笑い、脈絡をぶった切って、手にしているビール缶の表示を凝視した。 俺には目もくれない。彼女の前に現れてから、けっこうな時間が経っているというのに、一度もだ。始めこそ面食らい腹が立ったが、今や呆れて、そのさまを眺めている。まあ彼女にしてみれば、俺は見るまでもなく頭の中にある存在なのだろう。ともすれば、本当に見えていないのかもしれなかった。 うん、楽しくなってきた。体重、目に見えて数字が減るしさ、達成してる気になるわけで、楽しくて、何もない私だけどもこれは出来るじゃん的な、で、だんだんと、私にはこれがあるじゃん的な、これをやっていれば生きてていいんだ的な、そんな風になっていって、気づいたらもう、これしかない、勉強も書くのも疲れるし成果すぐに現れないし、やってもできないし、まあ、逃げなわけだ。でも逃げって気づいたところで、抜けないのね。 喋って、並びの悪い歯を見せて笑う。彼女の一人語りはだらけていて、暗く、そのくせ底抜けに楽観的だった。刹那的で他力本願、言わば、俺はまだ本気出してないだけ。 わざわざこうして聞かなくとも、彼女のことならなんだってわかる。彼女もそれはわかっているはずだ。あてつけのつもりか、言い訳か、同情を求めているのか。 俺を見もしないくせに、俺に許されたいのか。
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