地球

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かぎ針で毛糸を編むのが好き。 あみぐるみやコースターや手袋などを、私は気の向くままに窓辺のロッキングチェアに座って編む。 一目、一目。 こうしている時私の心は波の無い湖の水のように静か。 部屋には毛糸玉。 数え切れないほどの、部屋を埋め尽くすほどの毛糸玉。 毛糸はもう手には入らないから、 これだけあれば、私が死ぬまでには十分かな。 私は編む手を止めてカーテンの隙間から外を見る。 暗い。 外はずっと暗い。 何度見たっておんなじ。それでも時々手を休めて外を見る。もしかしたら、もしかしたら。 あの人が帰って来てくるかもしれない。 明るくなんてならなくていいの。 暗い方が、きっとわかりやすいでしょう? 空から帰ってくるあなたの船の光が。 空にはあんなに星があるのだから、1つくらい、あの人の船だっていいじゃない。 私は編む。 ずっとこの窓辺で、暗い外に船の光を待ちながら。
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