1人が本棚に入れています
本棚に追加
かぎ針で毛糸を編むのが好き。
あみぐるみやコースターや手袋などを、私は気の向くままに窓辺のロッキングチェアに座って編む。
一目、一目。
こうしている時私の心は波の無い湖の水のように静か。
部屋には毛糸玉。
数え切れないほどの、部屋を埋め尽くすほどの毛糸玉。
毛糸はもう手には入らないから、
これだけあれば、私が死ぬまでには十分かな。
私は編む手を止めてカーテンの隙間から外を見る。
暗い。
外はずっと暗い。
何度見たっておんなじ。それでも時々手を休めて外を見る。もしかしたら、もしかしたら。
あの人が帰って来てくるかもしれない。
明るくなんてならなくていいの。
暗い方が、きっとわかりやすいでしょう?
空から帰ってくるあなたの船の光が。
空にはあんなに星があるのだから、1つくらい、あの人の船だっていいじゃない。
私は編む。
ずっとこの窓辺で、暗い外に船の光を待ちながら。
最初のコメントを投稿しよう!