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生前、彼女は金髪だった。
根元が黒く伸びてしまったプリン頭だった。
その髪色のままの彼女を見間違えたりしない。
他の登場人物とは違い、彼女は黒い服を着ていないからだ。
私も、黒い服だ。
黒いシャツのワンピースだ。
今日の服は生前着ていた淡いピンクのパーカーで、デニムのショートパンツにこの世界のようにカラフルなペンキで塗り遊んだスニーカーを履いている。
その彼女は、水を噴いていない噴水の一番高いところに立っている。
その彼女を見上げるのが、私の夢の中の役割。
声は何も聞こえない。
ただ白い髪をした人々の足音と浮かぶ雫が割れる音、時折傘同士がぶつかる音だけがする。
しかし彼女の口は動いている。
赤いグロスが艶めく唇が薄く、私に何かを伝えている。
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