11:永遠

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とりあえず今できるのは、綾子さんをできるだけ大和くんから離すことだった。 単純な話、一緒にいるからDVが生まれるんだから、その時間を奪えばいいだけ。 問題は子供だけど、綾子さんと俺が会う間は大和くんが面倒をみてくれれば解決する。 もちろんはっきり頼むわけじゃない。 でも、大和くんの本音としても、一分たりとも綾子さんと過ごしたくないだろうから、自ずとそうしてくれるだろう。 だから俺は、時間が許す限り綾子さんと会った。 響子の真似をした綾子さんが、俺の響子への罪悪感を煽る。 けどどうしようもない。 俺にできたのは、綾子さんが万が一にも響子に危害を加えたりしないよう、響子を束縛して生活の自由を奪うことだけだった。 しばらくして、綾子さんが二人目を妊娠した。 俺は少しほっとした。 だって、妊娠している間なら、さすがの大和くんも暴力は振るわないに違いない。 もちろんそれだけじゃなくて、何しろ普通じゃない家庭だから、一人っ子よりは助け合える兄弟姉妹がいた方がいい。 「ま、1人も2人も変わんないし。俺が責任持って育てるから大丈夫」 淡々と言ってのける大和くんに、心からの「ありがとう」を返す。 「片桐くん、ごめん」 「……俺は、響子さえ守れれば、もうなんでもいいや」 どの口が言うのだと、自分で呆れた。 響子との仲はもうめちゃくちゃなのに。 「休みの日くらい外に出してよ!」 「ダメ。外は危ないから」 「危ないってなにが? 意味わからんない! だいたい、自分は夜ふらふら出かけてくくせに!」 「……仕事だから仕方ないでしょ」 「もういい! 離婚! 離婚しよ!」 それもいいかも、と思った。 俺と関わりがなくなれば、綾子さんも響子に拘らなくなるかもしれないし。 響子は勝手に家を決めて出ていった。 何をやってるんだろう。 俺は誰も幸せにできていない。 響子と離婚した日、綾子さんは二人目の俺の子を出産した。 二人目は女の子で、(つむぎ)というらしい。 会いたい、会ってみたい、でも会えない。 そして、またDVが始まってしまうかもしれないから手を打たなきゃいけない。 単純に、綾子さんと大和くんが離婚すれば御の字なんだけど、こんな状況でも夫婦を続けている二人を別れさせるには、一体どうしたらいいのか。 いい案が浮かばずにいたら、ある日大和くんがとんでもない提案をしてきた。 「俺が、全部元に戻してあげよっか?」 仕事で繋がりのある響子に全てを明かして、また俺が響子とやり直せるようにしてあげる、と大和くんは言った。 「なにそれ、大和くんのメリットは?」 「その過程を利用して、俺は綾子と別れられる理由を作る。だから協力しようよ」 へえ、離婚してくれるんだ、なら……。 俺はひとつ返事でOKした。
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