11:永遠

37/37
2120人が本棚に入れています
本棚に追加
/395ページ
大和くんの計画を大雑把に言えば、響子に綾子さんを実際にけしかけて、離婚に至った真実を響子にちゃんと理解させ、復縁させる、だった。 その過程、大和くんは綾子さんにいくつも問題を起こさせることで、離婚できる理由を作れる。 そういう状況を作るために、響子とある程度親密な関係になる、とも。 なんかよくわからないけど、そんな説明をされた。 大和くんが響子に惚れているのは、俺が響子の話をする度に必ず作り笑顔になるから、本人に聞く前からなんとなく気づいていた。 復縁させると言いながら、響子に近づいてあわよくば自分のものにしようとしているんだろうけど、それは構わなかった。 俺は響子との復縁なんて望んでいないし、綾子さんを助けられればそれでいいから、恋愛するならご自由に、だ。 ただ大和くんは、どんな理由があるにせよ、DVするような怖い一面があるから、響子をちゃんと幸せにするつもりがあるのか見極める必要があるな、とは思った。 ついでに、大和くんが響子と不倫するようなら、その証拠は離婚させるために役立つかもしれない。 そう思った俺は、大和くんには内緒で二人を尾行して証拠集めをすることにした。 あんな写真やらを実際に使うことになるとは思わなかったけど。 大和くんの計画では、俺が綾子さんを動かす役目。 綾子さんに変なことをやらせるのは嫌だったけど、何があっても絶対に警察沙汰にしないこと、響子のことは大和くんがちゃんと守ること、を約束に引き受けた。 高校のプチ同窓会を開かせて、綾子さんと響子を再会させるところから始まった計画。 いろいろイレギュラーも起きてスムーズにはいかなかったけど、俺の怪文書の甲斐があったのか、ようやく大和くんと綾子さんは離婚することになった。 けれど──。 結局失敗だ。 俺達の計画が、綾子さんを追い詰めた。 「全部、椿くんのせいだから!」 電話で綾子さんが叫んだ。 「子供まで取られちゃって! もう全部終わり! 響子ちゃんを殺して自分も死ぬ」 その言葉通りのことを、綾子さんは実行しようとした。 止める方法はあれしか思いつかなかった。 身体に傷をつけてごめん。 痛い思いをさせて本当にごめん。 大和くんと綺麗に離婚したら渡そうと思っていたお金も、直接渡せなくてごめん。 たとえ永遠に想いが届かなくても、憎まれても、永遠に愛してる。 そして響子。 嘘ばかりついてごめん。 大和くんはきっと大丈夫だから、どうか幸せに──。
/395ページ

最初のコメントを投稿しよう!