4:王の秘密

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──やっぱり世の中、甘い話なんてないのだ。 若くてイケメンで、頭もよくてセックスもうまくて……しかも大会社の社長のご子息。 そんなハイスペック過ぎる男性が、こんな38(今年で39)のバツイチ崖っぷちオバサンの前に、都合よく現れるわけがない。 正直、どこかで不思議に思ってはいた。 こんな若くてイイ男が、どうして私なんかの相手をするのだろう、と。 ……そっか、アバンチュールがしたいのは、大和の方だったのね。 よかった、本気で好きになる前で。 「結婚してたの? 全く聞いてないよ」 「あれ? まじで言ったつもりでいた」 ……嘘ばっか。 きっと彼は確信犯だ、でもそれを責めるのは何か違う気がした。 だって、こんなのラブゲームだとたかをくくって、訊かなかった私も悪い。 でも、どうせ嘘つくなら、嘘つき通してほしかったな。 不倫って知った以上、私はもう……。 「でも、別にそんなの関係ないじゃん」 大和は悪びれもせずそんなことを言った。 前言撤回、これ、怒っていい気がする。 「何が関係ないの!」 「だって俺、響子のこと、本気で好きだし」 あまりに真剣な顔で言うから、一瞬気持ちが傾いてしまいそうになった。 …………でも。 「知らない。……もう連絡してこないでね」 私は淡々と言うと、一万円札をテーブルに置いて、席を立った。 「は?なんで?」 「じゃあね、ばいばい大和。楽しかった」 笑顔で手を振って、私は店を出た。 ほんの一瞬だけど、いい男といい夢見れてよかった。 本気で好きになる前で、ほんとよかった。 ねえ……なんで追いかけて来てくれないの? そう思ったのは、きっと気のせいだ。
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