3人が本棚に入れています
本棚に追加
1
想像を遥かに超えるその言葉に、俺の中で何かが閉じた。
そこは、終礼を過ぎたばかりの職場で、電話の対応をする女子社員の声、打ち合わせをする同僚達の姿、今晩飲みに行かないかと後輩を誘う上司。全てが急に遠くに感じる。
耳に当てたままの携帯から聞こえる高橋の声さえも小さくなった。
「……なが…、いわなが……大丈夫?」
高橋の声に、引き戻される。
「仕事何時に終わる?
千波、今実家にいるみたいだから、今晩一緒に行こう」
実家にいる?
はっ?
なんだ、それ……
想像しようとして、頭が拒否する。
「俺、もう会社出れるから、おまえの会社の下にドトールあっただろ?あそこで待ってるから、仕事終わったら来いよ。取り敢えず、そっち着いたら、一回電話入れるからな。いい?」
「……あぁー」
正直、高橋が言ってる事の半分も、頭に届いていなかったが、取り敢えず力のない返事をすると、電話を切った。
最初のコメントを投稿しよう!