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ツナギの人物は、男性だった。
二十代前半か、十代後半に見える容貌。
髪は短く切り揃えられて清潔な印象を受ける。
海を真っ直ぐに見つめるその横顔になぜかどきりとした。
よくわからない緊張感。
--不意に、その顔がこちらを見た様な気がして、慌てて彼女は視線を逸らして、彼とは正反対の方向へと歩いた。
…あの時に、声をかければ何か変わっていただろうか。
そう思うくらいには、日常に退屈していた。
「あーあ、」
きっとあれは一目惚れというやつだったのだろう。
あの時何かしていれば、という今になってはどうしようもない後悔を抱えて彼女は太陽が昇り始め、陽が照り出した浜辺をゆっくりと歩き出す。
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