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十九歳
二十二時二十二分と三分のあいだ。黄緑色の時計のなかの針が指している。
私は疲れている。精神的なそれは、ひどくなると肉体的なそれまでも侵食するんだとはっきりと感じられた。幻滅なんてまだいい方で、もう顔も合わせたくないくらいだ。
その男と会うこと自体はそれまでにも何回かあって、けれどサシでは初めてだった。
私に彼氏がいることはもちろん言ってない。なぜなら出会いが一気になくなってしまうから(これは決していやらしい意味だけではない)。まあ訊かれれば答えるんだけど。
でも急に態度を豹変させてまでそんなに攻めることないじゃない。焦れったい女の考えなのはわかっている。でも私のなかでは結構重要なことだ。
ぼーっとしていたら三分が過ぎていたようで、私の待っていた電車がきた。夏の穏やかな空気が一掃された感じがした。終点がちょうど私が乗り換える駅までだったから、読み通り空席をつかまえることができた。
異性の友達というのは、やっぱり難しいのかもしれない。そうだと正々堂々(親にでも)言い切れるのはたった一人、海野くんしかいない。
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