その瞳の先に

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 結婚式を木の影から見ていた彼女は新郎の言葉を披露宴会場の端で聞き入っている。  その彼女は写真立ての中の女性と瓜二つの姿をしていた。 「そんなの見ていて分かるわよ、バカ」  新郎の幸せそうな顔に新婦も釣られるようにして涙を拭き取り精一杯笑顔を浮かべようと努力するのが見てとれる。 「私の分も二人とも幸せになってね。海翔・茜」  誰にも認知される存在ではない霊体である彼女は幸せそうな婚約者であった海翔と彼女の親友の披露宴を目の当たりにすると彼女の身体が薄くなり始めた。  だがその瞬間霊体である筈の彼女と親友の目が合った。 「私は彼を悲しませたら(・・・・・・・)貴女を怨みます」  本当に見えていたのか定かでは無かったが自分の想いを親友である彼女に伝えると彼女は頷いた。  そして幽霊である女性はその姿を完全に消失させて成仏していった。               ~Fin~
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