その瞳の先に

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 夏の日射し照りつける暑い日  とある教会では一組のカップルの結婚式が開かれていた。  その幸せそうな結婚式の様子を彼女は少し離れた木々の隙間から覗き込むように目視している。 「私は貴女を怨みます」  黒い長い髪が風に揺さぶられながら彼女は式の主役の一人である新婦に対して口にした。  結婚式を終えた新婚夫婦は披露宴会場の扉の前で披露宴が始まるのを待つなかで新婦が夫に確認するように独り言を洩らした。 「本当に良かったのよね……」  新婦の吐露した言葉を聞いた新郎は新婦に言うのと共に自分自身の心に訴えかけるように口に出した。 「ああアイツもきっと」 「お二人式の用意が出来ましたので」  案内の者がそう合図を出すと扉が開くと、新婚夫婦の友人達からの喝采の拍手で出迎えられた。  新婚夫婦が席に座ると新婦は新郎側の親族席にある空白の席を注目した。  その席があるテーブルの上には美しい女性の姿が納められた一枚の写真立てが置かれていた。   「新婦様、どうかなさいましたか?」  唐突に涙を流し始める新婦の姿に披露宴を担当していた係の人が駆け寄ろうとするが新郎がそれを止めた。  そして新郎は机の上に置かれていたマイクを手に取る。 「このような場で申すのは場違いだと重々承知の上ですが一言だけ言わせて下さい。明日香、俺は彼女と居て幸せだよ」  式場の関係者や一部の招待客には分からなかったがそれ以外の新婚夫婦の古くからの友人や家族にはその言葉の意味をすぐに理解した。
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