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「マリちゃん、おじちゃんはそろそろ帰らないといけないから、マリちゃんはママが迎えに来てくれる場所まで移動しようか」
「やだ、マリもおじちゃんの家に帰る」
正直、幼い女の子とは言え、ここまで俺が異性から好かれたことは初めてだったので、少しだけ嬉しかった。
ただ、もし本当に俺の家に連れて帰ったら、間違いなく俺は明日の朝刊に名前が載ってしまうだろう。
こうなったら嘘をついてでも、交番に連れていくしかないと思い、楽しいところに連れて行ってあげると言って、彼女の手を引いて交番に向かった。
――交番に到着した俺は、すぐにおまわりさんに声をかけた。
最初は何故か、おまわりさんは俺のことを変質者でも見るような目で蔑んでいるように感じた。
こんなおっさんが小さい女の子を連れて歩いていたら変質者に見られても仕方ないのだろう。
そんなことは気にせず、とりあえず事情を説明した。
「迷子の女の子がいて、公園で一人で泣いていたところを保護しました。母親を探しているようなのですが、1時間ぐらい待っても探しに来ないので、そちらで預かっていてもらえないでしょうか?」
おまわりさんに話をしている最中、マリちゃんはずっと俺の手を握っている。
「分かりました。そういうことでしたら、我々が責任を持ってお預かりしましょう。迷子の捜索依頼が来ていないかも確認しますのでご安心下さい」
「助かります」
「で、その少女というのはどちらにいらっしゃるのでしょうか?」
「え?」
このおまわりさんは何を言っているのだろうか?
今、俺と手を繋いでいるマリちゃんが見えていないのか?
「やだなぁ、おまわりさん。今、僕の横にいるでしょう」
「え……その人形が……?」
「は?」
よく見ると、俺が手を繋いでいるのは薄気味悪いボロボロになった西洋人形だった。
それに気が付いた俺は、すぐに人形を手放し、逃げるようにその場を後にした。
人形は交番に置きっぱなしにして、俺はそのまま家に帰ってきた。
あれは幻覚だったのだろうか?
もしあのままマリちゃんを家に連れて帰っていたら、俺はどうなっていたのだろう……。
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