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第三話 迷子
こないだ、天気が良かったので近くに散歩でも行こうと思って出かけた時のことだった。
歩き疲れた俺は公園のベンチに座ってぼんやりと周りの景色を眺めていた。
そこは小さな公園で、遊んでいる子供はほとんどいない。
静かで落ち着ける雰囲気なので、この公園は好きだった。
そんな中、珍しく1人の女の子が訪れた。
年齢は4歳~5歳ぐらいだろうか。よく見ると、その女の子は泣いているようだ。
「ママぁ……どこぉ……?」
どうやら迷子のようだった。ずっと泣きながら母親を探しているようで、放っておくのも何だか忍びない。
「ママがいなくなっちゃったの?」
「うん」
「じゃあママが見つけに来てくれるまで、おじちゃんと遊ぼうか」
「うん! 私ね、マリっていうの!」
俺は決してやましい気持ちで声をかけたわけではない。しばらくすれば、母親が探しにこの公園にやってくるだろうと思い、それまで少しの間、遊んであげようと思っただけだ。
ブランコや滑り台で遊んであげると、マリちゃんは泣き止んで楽しそうに笑った。
ただ、近所のおばさんたちが怪訝そうな顔をして俺のことを見ている。俺を変質者か何かと勘違いしているのか?
別に俺は幼女を誘拐しようとしてるわけじゃない。母親が探しに来るまで遊んであげようとしているだけだ。
俺は周りの視線などは無視して、彼女と遊ぶことに集中した。
――彼女と遊び始めて1時間以上は過ぎただろうか。余りにも遅い。
普通なら、とっくに母親が探しに来てもおかしくない頃だ。もしかしたらこの近くにはいないのか?
この子も寂しがっているだろうと思い、俺は心配そうに声をかけた。
「そういえば、ママはなかなか探しに来ないね?」
「うん。でもおじちゃんが遊んでくれるからママはもういいや」
よほど俺のことを気に入ってくれたらしい。
しかし、さすがにこのまま母親を探さずに俺と遊んでいるわけにもいかない。だからと言って、母親がどこにいるかなど検討もつかない。
仕方がないので、俺はこの子を交番に預けることにした。
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