不忍池小噺

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当時の江戸幕府は キリスト教など、一部の例外を除いては わりと宗教に対しては寛大な姿勢を取っておりました。 しかし、幕府にとって脅威となるものに対しては 容赦いたしませんでした。 そこで思い出してほしいのが 信心強情な法華宗の僧正・日蓮聖人でございます。 正しい教えを受けず、間違った帰依をして 国を混沌に貶めていると激しく批判した日蓮を 幕府は危険人物だとして弾圧をいたします。 弾圧は日蓮のみに留まらず、その信者にも行われました。 当然、国の仏事を監督する治部省も これと無関係とはいきますまい。 仏事だけでなく山陵の監督も任されておりましたゆえ 上野のお山に鎮座する感応寺は この点に()いても、睨まれていたと思われます。 ……ここまでくれば、もうおわかりいただけましたかな。 そう。 池を挟んだこのふたつの家は、大変に仲が悪かった。 感応丸と柳の前は 互いに対立する家同士という間柄にあったので御座います。
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