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しかし、悲しいことに
これは悲恋の物語なのであります。
やがてその密会に
勘づいた者がおりました。
柳の前の継母で御座います。
普通ならば
おのれ、愛し合うふたりを引き裂くとは継母憎し──
と、なりましょうな。
継母という役柄は
シンデレラや白雪姫にも代表される
ヒロインに意地悪をする登場人物と相場が決まっておりますが
はて、わたくしには
この継母が
果たして本当に継子である柳の前を憎らしく思って
そのような所業をしたのだろうかと
すこぅし疑問なので御座います。
柳の前は齢十五。
十五ともなれば、この時代の結婚適齢期。
この時分、女性は自由恋愛での結婚など許されてはいなく
親の決めた嫁ぎ先に嫁ぐ、というのが常でありました。
殊に官僚のお家であります。
柳の前には
すでに政略的な縁談の話が多数
持ち上がっていたと見てよろしいでしょう。
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