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「はぁ……まさか最大のライバルだと思っていた相手に、手紙だけで全てをひっくり返されるとは。それにこれは中々、重い罰だよ……僕にとっては救いとも呼べるかもしれないが」
「ねぇねぇ、何のお話~?楽しい感じ~~?」
「楽しいかどうかは分からないかな。けど、君には楽しいのかもしれないね」
「え~~」
気に入らないのか、ぷっぷくと頬を膨らませて「あぶぶぶっ!!」と不機嫌を露にするソラ。
「皆楽しくないとやっ!!」
「これは難しい注文だ……なんにしても、色々と始めないとか」
これからやる事が幾らでもあるし、恐らくそこら中で研究が始まるだろう。その前に、この現状を最も理解している人間が名乗りを挙げ、正式な立場で引っ張る必要がある。
僕は既に頭の中で幾つか計画を考え、即座に行動へ移し出す……
「それで、もう10年ですか。本当にお疲れ様です」
「早いくらいさ。まさかこの世界に『妖精教』が生まれるなんて思いもしなかったけどね」
結果的に言えば、無論成功した。妖精に不可能無し。世界では1日約36万人の赤子が生まれているのだ。つまりそれだけ妖精達が生まれている事になる。100匹集まれば常識など容易く破壊するのが彼等なのだから、世界が変わるのも容易だった。
僕がやった事は1つ。妖精を連れて人前に現れ、年中その力を示し続けただけ。無論あらゆるメディアを通して。
僕はアイドリーの渡された『妖精の基礎』を記した本を由衣に渡し、今話題の『妖精の作ったコーヒー』に舌鼓を打ちながら雪の空を窓越しに見る。
「妖精達は言ってしまえば『夢』そのものだ。楽しい、嬉しい、幸せという気持ちに貪欲で果てが無い。何より彼等は新世代の子供達の半身だからね。誰かがきちんとその存在を定義してあげれば、誰だって笑顔で迎えるだろうさ」
何より驚いたのは、多宗教の人間達が全員自然発生した妖精教に宗派変えした事だ。もっと抵抗し、テロ三昧になるかと思っていたのだが、此処も妖精達が難なく抑えてしまった。
まぁ目の前に奇跡そのものを体現した存在が公の場で、それもそこかしこを幸せにしながら登場してしまったのだ。ある意味で常識汚染による災害だ。
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