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「妖精って、こちらの世界では悪戯っ子で悪い者って考え方も多くありましたしねぇ。にしてもこれ、ボロボロですね」
「あいつが僕に渡した……まぁ聖典みたいな物だからね。御蔭で僕は妖精教のトップさ。しかも大学教授だし。それで君と会える時間も極端に少なくなってしまった」
「しょうがないですよ。今日は妖精さん達に背中を押されたのでしょう?」
「……まぁね。ご丁寧に妖精魔法で顔に認識阻害も掛けられる徹底振りだ」
僕はソラと一緒に世界各地を回り、その地域に居る妖精達と協力して国に呼び掛けた。
ある時は砂漠全てを再生し。1つの巨大なオアシスにした。
ある時は貧民国に行き、その妖精達に妖精魔法を教え、食物と回復魔法を覚えさせた。
ある時は紛争地域に行き、全てを面白可笑しく変容させ終戦させた。
ある時は聖地の取り合いをしている国で、全く同じ場所を原子レベルで再現した。
あらゆるテロリストグループ、マフィア、麻薬密売人、そしてその生産地に至るまで全てを壊滅させたりもした。彼等の身内にも妖精が存在していたので、そういった意味での汚い事も浄化出来た。
結局、妖精の方が遥かに人間にとっては刺激的だったのだ。何より、人間が求め続けた何もかもが、妖精の力によって容易く達成されてしまう。力に果てが無いだけに、それを止める力など無かった。数年もすれば太平洋のど真ん中に彼等の楽園が勝手に生まれているぐらいなのだから。国々は当然対処しようと頑張ったが、銃弾もミサイルも爆弾も、等しく花は飴玉に変えられてしまえばどうしようも無い。生まれた赤子を殺そうとしても全て無効化してしまうので、赤子の出産条件は100%健全になってしまった。
人類は妖精と共生する他無い。彼等の信条に基づき、『争い』という概念を根絶させられたのだ。
「よって世界は人口爆発に耐えうるだけの資源確保が完全となった。それどころか彼等の御蔭で夢の果てへ旅立つ準備も出来てしまった」
「宇宙開発、ですね?」
「たった10年で火星をテラフォーミングし、更にコロニーを数億の妖精が一斉に取り掛かって半日で建造してしまえば、そりゃあ争いなんて無くなるさ」
今も国連公認の大規模研究室では、世界中の科学者と妖精達が押し掛け毎日てんやわんやとなっている事だろう。
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