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(イケメンツンデレ上司など紙の上にしか……いな……)
だめだ。言い切ってしまったら夢すら消えてしまう。
(夢と愛はいつ失った?)
「……らさん」
(正社員ならまだしも、私派遣社員だよね? なんでこんな頑張らなきゃいけないんだ)
「か……さん」
(なんで会社のために身を削っているんだろ。派遣という働き方ってなんだ?)
「辛さん、今日は終了です」
(辛と書いて、カラってなかなか珍しい名前だと我ながら思う……いま呼ばれた?)
ライトテーブルにひっついていた顔をあげると、ただのドSが眼鏡の奥の一重を細めていた。
「え? いまなんて?」
「全員終了です。今日中の仕事がなくなりました」
見れば歓喜の声があちこちから聞こえてきて、すでにカバンを持ってドロン(煙のようにいなくなるの意)している人もいる。
これは夢か?
こんな時間に業務終了とは。親会社である出版社になにがあったんだろう。
~編集部、コッパミジンコ!
週刊ヤドカリマガジン、最大のピンチ!
次回、え、もう人事異動!?~
トメの文が浮かんで消える。
「今持っているので終了してください」
「ちょうど終わりました」
「修正は?」
「ありますが、3箇所ですし、明日の13時出しなので、明日の朝イチで大丈夫だと思います」
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