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「ふ~ん。ほんとうに大丈夫ですかぁ~?」
「7コマ目の絵柄に入ったペーノン取って、5コマ目の2コマ目の三点リーダーを二点に変えて、扉のタイトルロゴの白フチ1ミリを3ミリに変えるだけですから」
「ふ~ん、新人オペが修正したら、修正以外のところに間違いがでて再度直しがでるかもよ~」
「それでもすぐ終わりますよ」
この会話の時給いただけるのか?
「すぐという保証は辛さんがしてくれるんですよね~」
なにが言いたいんだこの男は。正社員というだけで偉そうに。
「派遣は責任とれませんけど」
あからさまにムッとする相手は派遣社員のくせに生意気な、とか思っているのだろう。おあいこだ。
「タイムシートにサインください」
上司を振り切って、バックをひっつかんでフロアを出たので、定時に帰れることの重大さに気づいたのは。
「外が明るい!」
正面玄関から外に出られるという類稀ない現実を目の当たりにしたときであった。
堂々と表に出ると、11月の風はひんやりしてはいたが、夕日は優しく照らしてくれる。
私はオレンジ色のニクい人だ。
「へへへ」
声まで漏れてしまった。
夕日だって吸血鬼なら即死だ。
「へへへ」
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