社畜にアフター5

5/6
前へ
/6ページ
次へ
 平日の夕方。お腹も鳴れば行列もできる。話題のつけ麺屋さん。最近リニューアルして店が綺麗になった。 「魚介系かぁ。いいなぁ……でも待てよ」  帰りが遅くなる社畜にとって、夜遅くまで開いていて早く食べられるラーメンというのは通常食。  類似語に牛丼というのもある。  ここにきてラーメンは勿体ない。 「どうしようかな」  6時が近づいてきて、秋の空はあっと言う間に暗くなった。  高いビルにカラスの影。  横3人並んで笑っている高校生。  犬を散歩させるおじさん。   前と後ろに小さな子供を乗せた自転車のお母さんがジェット機のように通り過ぎる。  それらを見送って。 「お米、あったかいの食べたいなぁ」  思えば一汁一菜という食事を何日していないだろう。  今日なら、どんな店でも門戸を開いて迎え入れてくれるだろう。  行き遅れの派遣社員一人暮らし。趣味を持つ暇なし、にもごはん屋さんはいらっしゃいませと寄り添ってくれる。  暖かなごはんと具だくさんのお味噌汁をお盆に乗せて、そっと持ってきてくれる。  お店の女性はだれに対しても平等な笑顔でこう言うのだ。 「お疲れさま」  路上でテッシュを出して鼻をかんだ。  さんまの塩焼き定食。  私にとってはインスタ映え。  湯気のたったごはんと味噌汁。  さんま。  さんまの焦げ目。       
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加