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結が寝静まってから、前日と同様、麻衣はリビングへやって来た。
「結ちゃん、寝ちゃったよ」
僕が頷くと、麻衣は苦笑した。
よっぽど僕が深刻な顔をしていたからかもしれない。
「結は警察に行って、父親のことを話した方が良いって思ってる。でも、まだ迷ってるって」
「そうだよね。そんな簡単に決められることじゃないもんね。
結ちゃんのお母さんには結ちゃんが悟くん家にいるって、話しておいた方がいいかな?」
「確かにその方がいいかもしれない。でも、母親に話したことで、結がここにいるって、父親にばれるリスクが高くなる」
そうなると、父親がどんな行動を起こすかわからない。
ここに乗り込んでくる可能性も高い。
結は連れ戻され、今まで以上にもっと酷いことをされるかもしれない。
男の僕一人で阻止できればいいのだが、結や結の母親、それに麻衣に危害が及ぶかもしれない。
僕が考えていたことを麻衣も汲み取ったようだ。先程の僕に負けないような深刻な表情をしているに違いなかった。
「そうだね。結ちゃんがここにいることは誰にも話さない方がいいし、気づかれない方がいいね。どこがどうなって、結ちゃんのお父さんに話が伝わるか分からないし」
僕は頷いた。
結がここにいることは、この日から、僕と麻衣と結の3人だけの秘密になった。
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