147人が本棚に入れています
本棚に追加
何となく、それが面白くなかった私は頬を膨らませた。
「平気な方がおかしいんです。これで怖がらない方が異常です」
「怖くないわけではないけど、所詮作り物だし」
「作り物なのは分かってます。でも本当にあった話だって、予告でも言ってましたし、やっぱり怖いものは怖いです」
「怖いのに最後まで一緒に見てくれたんだ。結は偉いね」
お兄さんの手が私の頭に延びた。
彼の手が優しく触れ、私は俯いた。
誰かに頭を撫でられるのは、すごく久しぶりだった。
遥か記憶の片隅にとある情景が浮かんできて、私の心臓はどきりと跳ねた。
今まで忘れていた。
私は小さいときにパパに頭を撫でられたことがあったのだ。
きっかけは何だったのかは、思い出せない。
多分、テストで100点を取ったとか、何かで賞を取ったとか、そんなことだった気がする。
パパは何も言わずに、私の頭を撫でてくれたのだ。
私はそれがとても嬉しかった。
何で今、こんなことを思い出すのか、分からない。
決心が揺らぎそうになる。
私はパパが大好きだった。
それは、今も変わらない。
最初のコメントを投稿しよう!