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何となく、それが面白くなかった私は頬を膨らませた。 「平気な方がおかしいんです。これで怖がらない方が異常です」 「怖くないわけではないけど、所詮作り物だし」 「作り物なのは分かってます。でも本当にあった話だって、予告でも言ってましたし、やっぱり怖いものは怖いです」 「怖いのに最後まで一緒に見てくれたんだ。結は偉いね」 お兄さんの手が私の頭に延びた。 彼の手が優しく触れ、私は俯いた。 誰かに頭を撫でられるのは、すごく久しぶりだった。 遥か記憶の片隅にとある情景が浮かんできて、私の心臓はどきりと跳ねた。 今まで忘れていた。 私は小さいときにパパに頭を撫でられたことがあったのだ。 きっかけは何だったのかは、思い出せない。 多分、テストで100点を取ったとか、何かで賞を取ったとか、そんなことだった気がする。 パパは何も言わずに、私の頭を撫でてくれたのだ。 私はそれがとても嬉しかった。 何で今、こんなことを思い出すのか、分からない。 決心が揺らぎそうになる。 私はパパが大好きだった。 それは、今も変わらない。
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