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その日はあまり眠れなかった。 ずっと、パパのこと、ママのこと、これからのことを考え始めると、一晩中、頭の中がぐるぐるしていた。 気づいたら、朝になっていた。 ベッドからいつもより大分重い体を起こして、リビングに向かうと、お兄さんが食卓に着いていた。 「おはよう。朝ご飯作ったから、食べて」 「ありがとうございます」 しまった。眠れなかったのだから、せめて、早く起きて、朝ご飯を作っていれば良かった。 晩ご飯を作るために冷蔵庫の中身を見た時から知っていたが、お兄さんは料理ができるらしかったので、先を越されてしまった。 麻衣さんが作った和食の朝ごはんも美味しかったが、お兄さんが作ってくれた洋食の朝ご飯も同じぐらい美味だった。 パンを噛りながら、考え事を続けていると、前方から視線を感じた。 顔を上げると、お兄さんと目が合った。 彼は私と目が合うと、微笑んだ。 「あんまり眠れなかった?」 不意を付かれ、どきっとした。 その通りだったからだ。 言葉を濁そうと、視線を泳がせる。 「やっぱり怖かった?昨日見た映画」 思いもよらない言葉に内心ほっとした。 私が悩んでいることにお兄さんは気づいていないようだ。 「そうですね。少し」 「そっか。今度は怖くない映画借りてくるから、また一緒に見よう」 お兄さんの提案に本の少し、気分が晴れた。 今までモヤモヤしていた気持ちが軽くなった。 「楽しみにしてます」
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