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結の意識は明け方まで戻らなかった。 結の母親は、僕たちに帰るように言った。 僕たちは拒んだが、結の母親の意志は固く、結の意識が戻ったら、すぐに連絡すると言ってくれた。 その目は、僕たちのことを心配していた。 そこまで言われたら、僕たちは引き下がるしかなかった。 麻衣と一緒に病院を出ると、蝉の鳴き声がした。 「麻衣、もしかして、こうなることがわかってたんじゃないの? だから、昨日、結を帰したんじゃない?」 麻衣を責めても変わらないのは、わかっていた。でも、止まらなかった。 「これが、結ちゃんの選んだ道だよ。 私には止められなかった」 「もっと、他に方法があっただろう。 一緒に警察に相談に行くとか。 なのに、なんで、こんな......」 「これは想像だけど、結ちゃんは私たちが捕まるのが嫌だったんじゃないかな? 一緒に警察に行ったら、おとがめなしって訳にもいかないでしょう? 私たちは結ちゃんを誘拐したのと同じなんだよ。 例え、そこに結ちゃんの意志があったとしても、私たちは法に裁かれる。 それが今の法律なんだから」 僕は絶句した。 結は僕たちのことを考えてくれていたのか。 結を助けるつもりだった。 でも結は、僕たちを助けようと行動を起こしてくれたのか。 どんなに勇気がいったことだろう。 僕たちのために結は危険な目に遭ってまで、今の状況を変えようとしたのだ。 「また僕は間違えたのかな。結を連れて逃げ出したあの日に警察に行ってたら、何か変わっていたのかな」 麻衣は何も言わなかった。 でも痛いほど伝わってきた。 確実に今とは違う未来になっていただろうということは、麻衣も感じているに違いなかった。
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