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結が意識を取り戻したのは、翌日だった。 結の母親から連絡が来て、僕は麻衣と一緒に病室へと向かった。 僕たちが病室に入る際、結と結の母親の話し声が聞こえた。 僕はまず結の母親と目が合った。 彼女は僕たちをベッドの傍に置いてある椅子へ座るように促した。 結の母親はこれから医者と話があると言って、僕たちに向かって会釈をし、病室を出ていった。 結は僕たちの姿を見て、悲しそうに笑った。 「来てくれたんですね。 こんなことになってしまって、本当にごめんなさい。 お母さんから聞きました。お二人が応急処置をしてくれたって」 「結ちゃん、目を覚ましてくれて、本当に良かった」 麻衣が椅子から身を乗り出し、結の顔を窺う。 「もう大丈夫なの?頭は痛くない?」 「お医者さんからは、すぐに応急処置したのが良かったんだろうって、言われました。 本当にありがとうございます。 お二人には、感謝しても足りないくらいです。 まだ少し痛みますけどね」 結が自らの手で頭の包帯に触れる。 それを聞いて、僕はほっと胸を撫で下ろした。 麻衣もやっと安心したようだった。 「お二人に大事なお話があります」 結がとても深刻な顔をしていたので、僕は嫌な予感がしていた。 「私......お母さんと一緒にお母さんの地元に帰ろうと思います」 「それって......」 「はい。お母さんの地元は結構遠いところなので、もう会えないと思います」 「そんな......せっかく仲良くなれたのに」 麻衣が目を伏せた。 僕は頭の中が真っ白になって、何も言葉も出てこなかった。 「私、お二人に本当に感謝してます。 麻衣さんは優しくしてくれて、こんな私の話を聞いてくれて、本当のお姉さんだったらって、何度も思いました」 「私は何もしてないよ。でも、私も結ちゃんが妹だったらって思ったこと何度もある」 「麻衣さんも同じことを思ってくれてたなんて、嬉しいです」 二人が笑い合って、少し空気が和やかになった。 結が僕を見た。 僕は結から目が離せなかった。 「お兄さん。あの時、助けてくれて、私を連れ出してくれて、本当にありがとうございます。 あの時、助けてくれなかったら、どうなっていたか分かりません」
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