傘の群れ

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傘の群れ

 小雨の中、バイト先へ向かう道中で、小学校の低学年らしき一団を見かけた。  色とりどりの傘を差し、一列に並んで歩いている。  時刻は十時ちょっと過ぎ。登校にも下校にもかぶらない時間だ。こんな時間に小学生が外を歩いているなんて、何かの課外授業だろうか。  でもそれにしては、引率の先生らしき大人の姿が見当たらないし、いくら少子化が進んでいるといっても、ここいらの地域で小学校の一クラスが十人未満ということはない。  まさか集団で学校をさぼろうとでもしているのだろうか。  気になり、一団を何となく目で追っていたら、全員がピタリと足を止めた。 「きゃーーーーーーーーーー!!」  いくつもの悲鳴が響き渡る。それと同時に人数分の傘が宙に舞った。  傘の下から現れた子供達の姿はみな真っ赤に染まっていた。  バタバタと小学生達が倒れる。その上に舞った傘が重なり落ちて、すぐに子供の姿も傘も俺の視界から消え失せた。  今のは何だったのだろう。  混乱しながら周囲を窺う。すると、ちょうど小学生達が足を止めた辺りの道端に小さな花束が置かれているのが見えた。  その花の存在に、俺は自分が何を目撃したのかを悟った。  後日、確認のために調べてみたら、やはりあの場所は交通死亡事故の起きた場所だった。  もう数年前だが、集団登校をしていた小学性の列に雨でスリップした大型トラックが突っ込み、数人の死者が出たという。  その事故が起きたのが、ちょうどあの日だったのだ。  自分とは関わりのない事故だし、面識のある子もいないけれど、あの日悲しい瞬間の再現を目撃した縁で、今度あそこに花を供えようと思う。 傘の群れ…完
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