散らかった部屋

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 横になりながらスマホをいじっていると、「プラナリアは共食いした相手の記憶を引き継ぐ可能性がある」との記事がある。この前かかりつけの医者が、「アニサキスはほとんど完全に安全だから、嫁に仕返しする方法として非常にいいよ」と冗談を言っていたのを思い出す。なかなかそれに匹敵する恐ろしさだ。いったい記憶というのはどうなっているのか。それと同時に、医者というのはなかなかそこまで意地悪なものなのだろうか。  彼方のアルプスを想いながら本を開くと、一枚の写真が出てきた。写真下に広がる雪は影がはっきりと映る白さで、真ん中の雲は少し灰色がかっている。その上に抜けるような青空が広がっている。写真の中心にこちら側から向こうの崖の下へ降りようとするスノーボーダーを写したもので、カネの無かった僕が転勤先で初めて撮った写真だ。撮影したカメラは六千円のデジカメで、これはいつしか雪の上で使っているうちに壊れてしまった。
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