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時おり雲が流れる青い空。
美しい緑の丘に一人の老女は居た。
まだ幼い少年が老女に近付いた。
「ねぇ、お婆さん。このおねぇちゃんは生きてるの?」
老女は驚き少年に問いかけた。
「ボクの目には何が見えるかい?」
「…ガラスの棺のような物の中に青い薔薇の花びらと女の人」
老女は吐息を吐いて言葉をつむぐ。
「昔、3人の男女がいたんだ。その女はその一人で二人の男に愛されこうなった」
「男の一人はミュータントでもう一人はサイボーグだった。女はアンドロイドで3人の中で唯一不死に近かった」
「サイボーグの不死化は可能にならなかったし、ミュータントの男は女を自分だけのものにしたかった。だからミュータントの男は女の意思を無視してこの青薔薇を使った結界に女を閉じ込めた。自分にしか分からないように」
風が吹き抜ける音がする。
「お婆さんなんで知ってるの?」
「これでも能力者なんだよ。触れた物の過去が見える」
ボーイソプラノが響く。
「あれから何年だろう、輪廻転生なんて信じてなかったけど、キミに逢えてボクは嬉しいよ!」
ひときは大きく風が吹き、二人が見ていたガラスの棺が溶けていく。
青い薔薇の花びらが舞い散り成人型女性アンドロイドは目を覚ます。
「…おはよう」
少年にとって、かつてサイボーグだった男にとって懐かしい不器用な微笑み。
「これからは神様も運命も少しは信じる気になった。…愛してる」
それを見ていた老女の能力者は、はらはらと涙をこぼした。
(おわり)
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