団塊

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 ***  良次はいわゆる団塊と呼ばれる世代に属していた。戦後のベビーブームに生まれ、高度経済成長の中、競争社会を生き抜き、社会を牽引してきたという自負がある。  田舎を出て懸命に働いて、多喜子と結婚し、二人の子供に恵まれた。娘はそう遠くないところに嫁いで家族とそれなりに暮らしている。幸せかどうかは良次にはわからない。妻が元気なうちは何かと手伝わされていたが、多喜子(たきこ)は文句を言いながらもそれを楽しんでいた。  だが、この2年はほとんど寄りつかなかった。父親である良次を面倒だと思っているのだろうし、兄である章太(しょうた)が引きこもり続け、父親の財産を目減りさせていることにいらだっているのかもしれない。  章太は良次の言うとおりに大学に入り、大手の会社に就職して、結婚して、という人生を送るはずだったが、有名どころの大学には入れなかった上に、就職氷河期にぶつかり就活に失敗し、正社員にはなれなかった。  父親の「努力が足らない」「俺は頑張った」「おまえもできるはずだ」は章太には響かなかった。反発しかなかった。子供が自分の思い通りにならないことに腹を立て怒鳴るだけの父親を尊敬できるわけもない。
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