団塊

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 良次にとっては長い2年だった。息子と二人でなんとか暮らしてきた。何度か風呂に沈み込んでみたが、自分を殺すことは難しかった。  妻の3回忌を早めに行い、その日を待つだけの日々を過ごしていた。普段の生活では顔を合わすことはほとんどなかったが、台所で鉢合わせてしまった。 「誰の金で暮らせてるのかわかってるのか」 「定年と同時に年金もらえて、長生きしたから払ったものよりもらったものの方が多くなっただろ。分けてもらって何が悪い」 「俺が死んだらお前どうやって食べてくんだ」 「そんなもん、どうにでもなるよ」 「今からでも働け、社会のゴミのままでいいのか」 「俺をゴミっていうなら、あんただってそうだろ」  章太に肩をつかれ、よろめき倒れた。そんな父親を鼻で笑って冷蔵庫の中を物色している。良次はゆっくり立つと、洗いかごに立てかけてあった刺身包丁を取った。  チャイムが鳴り、天を仰いでいた良次は確認もせずにドアを開けた。 「寿命調整管理局です。高橋良次さんですね。迎えに来ました」 「いいところに。警察を呼んでください」  職員が良次の姿と言葉に驚き、部屋に上がった。 「救急車を呼びます。深い傷ではないので、大丈夫ですよ。しっかりしてください」 「死ななかったのか」  無念とも安心ともつかぬ表情で良次はつぶやいた。 「私が殺そうとしたのは間違いありません。裁判や刑務所など無駄な金は使わないで私を処分してください。娘には申し訳ないと伝えられたなら……」
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