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   ***  綺麗な空色の車は港に向かって走っていた。施設に着いた時は満員だったが、今は半分ぐらいしか乗っていない。 「皆さん、港に着きましたらボートに乗り換えていただきます。今後についてご説明します。皆さんはこの国の住民ではなくなり、大きな意味では死んだことになります。国のお金をかけて皆さんを養うことはできませんが、島に着いたらそれぞれ工夫して、協力して暮らしてください。なお、島は無人島ということになっています。レーダー回避のため無人島に見えるようシールドをかけてあります。このような島はここだけではなく、たくさんあります」 「死なないのですか? 生きなきゃいけないのですか?」 「はい、皆さんはご自宅に帰らないこと、つまり死ぬこと、それは島に行くことを選択したことになります。残された寿命を使い、ここで最後の仕事をしていただきたいというのが寿命調整管理局からのお願いです」 「仕事ですか?」 「そうです。ボランティア仕事ですけれど。今、国が少子化の対策で子供を増やすことに力を入れていますが、子供は夫婦などの国民二人のペアや国民一人とAIロボットのペアに育てられています。愛情を注がれて育つ子とそうでない子との間に格差があります。その格差を少しでも埋めるため皆さんにご協力をお願いしたいのです」
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