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朝食を食べ終わった後、具合の悪さを訴る彼女は病院へと出掛けて行った。
特に用事も無い俺は、彼女の送迎をすると言ったのだが、それを断られ、自室で曲を作っていた。
ちょうどお昼になった頃、ドアをノックする音が聞こえた。
「どうぞ」
開いたドアからそっと中を覗く彼女は、朝出掛ける時より顔色が良くなっている感じがした。
「おかえり。暑かっただろ」
ギターを置き、彼女を部屋の中へと招き入れ、ドアの側にあるソファーへと座らせる。
「あのね啓ちゃん」
ソファーへ座ると同時に、泣きそうな顔で俺を見上げ話し掛けて来た。
彼女の隣に座ると、再び「あのね」と話しを続ける。
「ずっと具合悪かったアレね……」
その弱そうな喋り方と表情で、悪い結果を聞かされるのだろうと思うしかなかった。
「病院…2ヶ所行って来たんだけど……」
息を呑み、次の言葉を待っていた。
「私……妊娠してた」
………え?
「来年の2月には生まれるみたい」
………は?
そう話した彼女は、さっきより不安そうな表情で俺を見ていた。
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