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彼のオススメだったカタナーラと言うデザートをお持ち帰り用にしてもらい、私達はお店を出て、また来た道を戻っている。
夏の始まりの夕暮れは何処か大胆で、時間を忘れさせるように、ゆっくりと街を赤く染めて行く。
「ん?どうした?」
夕焼けで赤くなっている空を見上げながら歩く私を、彼は少し振り返って声を掛けて来た。
「え?あ...真っ赤だなーって思って」
同じように空を見上げた彼は「あぁ」っと、興味のない声を出していた。
マンションの地下の駐車場に着くと、さっきよりひんやりとする空気の中、彼は私を振り返らず聞いてきた。
「なつー、どうする?...どっか行くか?」
首を振る私を見て、彼は車の中から私の学校の鞄を取り出し「じゃーもう何処にも出掛けねーからな」っと言って車のドアを閉めた。
緊張して付いて行く私をたまに「クスっ」と笑い、彼は自宅へ招いてくれた。
「どうぞ、お嬢様...」
そう言って私用のスリッパを出してくれた彼は、先にローカを歩いて行ってしまった。
さっきよりも緊張しているらしく、上手く歩けていないような気がする...
玄関から伸びたローカを左に曲がると、その先の扉の奥で彼が「こっち...」と声を掛けてくれた。
広いリビングには無駄な物が何も無く、ソファーに脱ぎ捨てられている2枚のシャツがやけに目立っていた。
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