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そのシャツを手にした彼は「座れば?」っと言い残し、部屋から出て行ってしまったので、私は窓の外をそっと覗いてみる。
高層マンションからの眺めは予想以上に綺麗で、まだ少し赤く染められている街が、早くキラキラと輝く夜の色に変わるのが楽しみになる程だった。
「どうした?」
リビングへ戻って来た彼は、私が外を覗いているのが気になって隣に立った。
「うわー、まだ暑そーだな...」
窓に腕をついて外を眺めている彼を、私は隣で見上げてた。
「ねぇ。啓ちゃん...身長って何センチ?」
自分で声を掛けたんだから、彼が私を見るのはわかっていたのに...
急に見下ろされ、その瞳にまた緊張してしまう。
「は...俺?180...なんで身長?...なつは何センチになった?」
私の頭へ手を置き優しい目をして覗き込む。
「158...」
クスっと笑った彼は「あんま伸びなかったなー」っと楽しそうに言って、キッチンヘ行ってしまった。
その彼の後ろ姿を見つめながら、長身の彼の横に並んでお似合いなのは、やっぱりスラリと細い背の高い女性なんだろうなーっと...勝手に落ち込んでいた。
まだ窓際に立ったままの私は、キッチンから戻って来る彼に手招きをされ、一緒にソファーへと座った。
テーブルに缶コーヒーとビールを少し乱暴に置いた彼は、ソファーの下へ座り直し私を見上げた。
「なつが飲みそうなやつがなんもなかったから...」
そう言って缶コーヒーを手渡してくれた。
「アイツ等、帰りになつを迎えに来るって言ってたから...」
少し上目遣いでそう言うと、ビールを開け美味しそうに飲んでいた。
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