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私も彼と同じようにソファーの下へ座り直すと、さっきより暗くなった室内にリモコンで電気を灯し、テレビも一緒につけられる。
映し出されたバラエティー番組は『まだ間に合う!夏に脱げるカラダ 本気ダイエット』と大きく謳い、興味を唆っていた。
「私も痩せないとなー」
独り言を呟いたつもりだった...
「はぁ?お前...それ以上痩せる気か?止めとけ...今は少しぽっちゃりしてるくらいが可愛いんだぞ」
こっちを見ないでそう言った彼に少しムカついて、私は体ごと彼の方に向き直し、持ったままの缶コーヒーをぎゅっと握りしめた。
少し驚いた彼はやっと私の方へ視線を向けてくれた。
「じゃあ、啓ちゃんはぽっちゃりした女性が好きなの?」
自分で聞いておきながら、耳を塞ぎたい気持ちだった。
ーどうしよう...モデルみたいな体型が好きっていわれたら...
「は?別に体型はどうでもいいだろ...」
「じ、じゃあ...顔で決めるの?」
「は?何を?」
「付き合う人...」
彼の見開かれた目を見て、私はとんでもない事を聞いてしまった事に気づいた。
「なんで...?」
いつもとは違うゆっくりとした口調が、もう後には引けない雰囲気を作っていた。
「え...ただ...啓ちゃんの好きなタイプを知りたくって...」
最後の方は自分でも何て言っているのか聞こえない程、小さな声になっていた。
見つめる瞳からは何も読み取れない...
けど...いつもより優しい瞳をしている事はわかった。
「そんなの知ってどうするんだよ...」
彼は少し困ったように眉をさげていた。
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