385人が本棚に入れています
本棚に追加
/279ページ
何となく...今までと態度の違う夏希には気づいてはいた...
けど、それは...
少し大人になったから、一番近くに居る俺を異性として認識し始めたんだろう...
それくらいにしか思っていなかったんだ...
夏希の誕生日の翌日。
初めて俺に対して赤面していたのは、恥ずかしさだけではなく...
俺に対する好意も入っていたんだろうな...
それに気づかず俺は...
秀一に気づかれないよう、わざと宿題のわからない所を教えるふりをして、夏希の部屋へ行って...
自分で意味有りげにしてしまっていたのかもしれない。
あれから秀一の家で仕事をする時、夏希は学校から帰って来ると必ず地下のレコーディング部屋へやって来ていた。
宿題を広げてはいたがそれをする様子は全くなく、大人しく俺達の仕事を見ていた。
けど...何度も瞳が合い...その度にそらされてしまっていた理由が今ならわかる。
夏希に勘違いさせてしまったのは俺だ......
『え...ただ...啓ちゃんの好きなタイプを知りたくって...』
『啓ちゃんの...好きなタイプの女性になりたいの......』
そう言わせたのも...俺だ......
最近の夏希の態度と今言った言葉で、夏希の気持ちがわかってしまい小さくため息をついた。
そんな俺を見て、頑張って誤魔化そうとする姿に自然と手が伸びていた。
ごめん。俺が悪いのに...俺なんかにそんなに頑張らなくていいから...
抱きしめた腕の中で、夏希は小刻みに震えていた。
最初のコメントを投稿しよう!