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少し落ち着いて来たタイミングで、腕の中から離れて行った夏希は、俯いたまま小さな声で謝っていた。
謝るのはこっちなのに...
泣きはらした目を擦る手を掴んで止めると、驚いた顔で見上げていたが、俺は直ぐに目をそらし、そのまま立たせ洗面所へと連れて行った。
勘違いをさせないように...そう思っての事だったけど...
あの目のそらし方は露骨過ぎたかな...
こんな小さな事に気を使う人間ではなかった俺が、かなりセンシティブになっていた。
洗面所から戻って来た夏希は、キッチンに立っている俺の目の前までやって来た。
「デザート運ぶの?...お手伝いするよ?」
冷蔵庫から出したばかりの箱を見て、そう声を掛けて来たみたいだ。
あぁ。こういうのを純粋って言うんだろうな...
夏希の言い方を聞いて、そんな事を思いながらデザートを出す準備をしていた。
「んんーー。美味しいー」
カタナーラを一口食べた夏希は、目を大きくしてバタバタしていた。
そこまで喜んで貰えるとは思っていなかったが、悪い気は全然しない。
一口食べる毎のリアクションを見て、愛おしい感情が再び込み上げて来ていた。
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