曖昧な日常

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何処へ向かうのかわかからないまま家を出た私は、彼の車の後部座席に芽衣と一緒に乗り込んだ。 動き出す車の中では、彼と芽衣が楽しそうに話している。 私はそれを聞きながら、バックミラーに映る彼をこっそり見ていた。 ミラー越しに見る彼は、話しの途中で笑った時、その後は必ずパッとミラーを見るから、何度も目が合った。 けど...一度も私と話す事もないまま目的の場所へ到着してしまった。 駐車場から少し歩き、ひとつのビルの中へ入る。 エレベーターで上を目指している間、見た目から高級な雰囲気がする室内をキョロキョロと見ていた。 扉が開くと目の前には店員が待ち構えていて、その店員の格好と足元の絨毯のふわふわ加減で、高級店である事は間違いなかった。 「加藤様、お待ちしておりました」 綺麗にお辞儀をする店員は、ローカを先に歩きひとつの部屋へ案内してくれた。 目の前にセットされているソファーへドカッと座った彼は、ここに来るまでの経緯を話し始めた。 「あの楽器屋でまた芽衣ちゃんと会って...送ろうか?って言ったら、送る時間があるなら少し付き合ってくれって言って...」 なぁ...っと芽衣へ同意を求める姿を、まだ扉の前に立ったまま見ていた。 「そうなの...もし夏希がこっちに居るなら、一緒にカラオケに付き合ってください!ってお願いしたの」 そう言って彼に見えないようにウインクをする芽衣は、いつもよりテンションが高く見えた。
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