彷徨う惑星

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わたしたちはこの小さなバスタブ型の宇宙船で広い宇宙に取り残されてしまったのだ。 こうして肌を触れ合わせている間にも彼は一体どんな闇を抱えて生きているのだろうか。わたしにはその孤独の存在を感じることができても共有することは叶わない。 身体にとどまった水滴が冷えてきて鳥肌が立つ。 その場で温めるように抱き合い優しくキスをする。 太ももに彼のペニスの熱が伝わってくる。 そして再び彼はわたしの中に入ってきた。 今度はゆっくりと包み込まれるようなセックス。 背中からうなじにかけて唇を押し付けて印を付けていく。 この印に込められた意味は知る由もない。 そもそも意味などないのかもしれない。 わたしは何かにつけて意味を見出そうと深読みしてしまう癖がある。 著名な作家が何百年も前に何となく書いた一言が世紀を超えて論争になることがあるように。 それでもわたしにとってこの印には彼と過ごした夜が書き加えられたという意味があるのだ。 朝になればまた彼はわたしから離れて行く。 それを止めることはできないし追いかけもしない。 いつか再び会えることを願って一人で幾夜も過ごすのだ。 それは時折接近してはまた方向を変えて遠ざかる惑星の軌道のようなもの。 そして彼は静かに射精した。わたしは無数の星が煌めく宇宙を思った。 おわり
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