第一章 天使の日常

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 新月の夜、眩い光の矢が闇を切り裂く。  光の矢を放ったのは、輝く翼を背負った天使。そして矢に貫かれたのは、顔の半分を布で覆い、大きな布の袋を背負った複数の男たちだ。男たちがいる場所の近くには、ドアが破られ中を荒らされた一軒の家がある。  矢に貫かれ、倒れた男たちに天使が言った。 「立ちなさい。 そしてあなた達の罪を告げるのです」  その言葉と共に光の矢は消え去り、男たちがのろのろと起き上がる。持っていた袋を地面に置いたまま、男たちは揃ってどこかへと歩いて行った。  残された天使は、男たちが置いていった袋を持って荒らされた家の中へと向かう。 「お邪魔します」  そう言って中に入ると、そこには縄で拘束され、口に布を詰め込まれた家の住人がいた。天使は住人の口から布を取りだし、縄をほどいていく。 「ああ、天使様ありがとうございます」  あの男たち、強盗に襲われて余程怖い思いをしたのだろう、住人は涙混じりの声で天使にお礼を言う。それを聞いた天使は、着けている羽を模った仮面で顔を隠したまま口元だけで笑う。 「お礼には及びません。これが私の使命ですから」  住人を解放した天使は、強盗たちが持ち去ろうとしていた物を持ち主に返し、その家を後にする。  輝く翼をはためかせて空を飛ぶ姿は、明るくなり始めた空に溶け込んでしまいそうだった。
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