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最近は公園にごみ箱を置かない風潮になっているようで、俺たちは、コンビニで買った物の食べカスやゴミ、空き缶をそのまま公園に放置した。
公園の傍では、どこから現れたのか知らないが、年寄がゴミ袋と火箸を持ってゴミを拾って歩いていた。俺はしたたか酔っていたので、若い頃のように悪ふざけをしたくなり、ゴミを拾って歩いているその年寄の目の前に、吸っていた煙草をポイ捨てした。
周りの仲間達も、酒が入っている所為か、妙にハイになりその様子を笑い声を立てながら見ていた。
目の前に吸い殻をポイ捨てされた爺さんは、俺をじっと見つめて
「ポイ捨て禁止だよ。」
と言った。妙に落ち着いて物怖じしない態度が気に障った。
「何だと、このジジイ!」
俺は、爺さんの襟首を掴んで凄んだ。それでも、その爺さんは臆することなく俺の目をじっと見て、目を離さなかった。不気味な爺さんだった。
「おい、やめとけよ。」
彰人が俺を制止した。
俺は爺さんの襟首を掴んだ手を緩めて、
「おい、人を見て物を言えよ。爺さん。」
と捨て台詞を残してその場を去った。
去っていく俺たちを、いつまでもその場に立って、爺さんが見続けていることに俺は気付かなかった。
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