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誰もいないアパートの鍵を開け、俺はさすがに飲み疲れて、倒れるようにベッドにもぐりこんだ。目が覚めると、もう夕方だった。ああ、もうそんな時間なのか。俺はのろのろとベッドから体を起こすと、風呂場へ向かった。風呂は、玄関を入ってすぐ右にあり、必然と俺は玄関に向かって歩いて行った。
「ん?なんだ?この臭いは。」
ダイニングから一枚扉を隔てた玄関に向かう廊下で異臭に気付いた。
どうやら、異臭は玄関からするようだ。
「タバコ?」
玄関からはタバコの吸い殻のすえたような臭いがただよっていた。
おかしい。灰皿は、居間にあるはずだ。
玄関に降りて、臭いの元を確認すると、どうやらドアポストからのようだ。
「なんでこんなところから?」
俺がドアポストの蓋を開けると、大量の吸い殻が、ザーッと玄関になだれ込んできた。
「なんじゃこりゃ!」
玄関は大量の吸い殻で埋め尽くされ、俺は頭に血が上った。
「畜生!誰がこんなことしやがった!」
俺は大声で叫んでいた。俺は朝方の出来事を思い出していた。
公園で掃除をしていた爺さん。目の前で俺が、ふざけてタバコをポイ捨てしてやったあの爺さんの仕業か?あのジジイ。俺をつけてきて、こんな嫌がらせを。
「許さん、あのジジイ。」
俺は、風呂に入るのも忘れ、すぐさまシャツを羽織ると、そのまま出かけた。
あのジジイを探すためだ。
「よくもやってくれたな、ジジイ。」
俺は、必死であの公園のあたりで爺さんを探したが、それらしき人物は見つからなかった。
「畜生、どこに住んでやがるんだ、あのジジイ。」
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