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マリア
むかしむかし、あるところに一人の少女がいました。
裕福で何不自由無い暮らしでしたが、厳格な両親にきびしく育てられていました。
しかし、少女には誰にも言えない秘密がありました。召使の奴隷と一線を越えていたのです。
やがて、少女は奴隷の子をみごもりました。
ある日、少女の大きくなったお腹に気付いた父親が、烈火の如く怒り、少女を問い詰めました。
少女は、自分が奴隷の子をみごもっていることを話せば、どんなに恐ろしい事態になるか察知できました。
そして、何もわからない無垢な表情で答えました。
「お父様、実はしばらく前に、夢に天使様が現れて、私にこう告げたのです。『おまえは聖霊の子を宿すこととなる。大切に産み育てるのが、おまえの使命である』。私は、それが何を意味するのか分からずにいましたが、最近お腹が大きくなってきて不安でしょうがないのです」
父親は、実はバカでした。
娘の話をそっくり信じ込んだ父親は、涙を流し喜び、はち切れそうになった娘のお腹をなでて言いました。
「こんな名誉なことはない。我が家から、神の子が誕生するのだ。国中に知らせて盛大に祝おうではないか」
やがて、少女は、男の子を産み落としました。
父親は歓喜し、自ら孫に名前をつけました。 「イエス」
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