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東京拘置所
西暦2018年7月某日、その日は突然やってきた。
この日を境として、ここ東京拘置所は、一人の死刑囚が王として君臨する「城」へと変貌した。
その日は、死刑囚Aの死刑執行日でした。
地下の死刑執行室に連れていかれたAは、規則通りに首にロープを掛けられ1メートル四方の大きさの蓋の上に立たされた。
合図と共に、三人の執行官が三つのボタンを同時に押す。
蓋が開き、Aの身体が穴に落下し、絞首刑が完了する。と、誰もが思った。
しかし、そこには信じられない光景があった。Aは、開いた蓋の上で浮かんでいるのだ。
「空中浮遊」であった。
そこに居合わせた全員の脳裏に、以前見た画像がよみがえる。
同時に経験したことの無い恐怖が、彼等を支配し始める。
そして、恐怖が畏怖に変わり、畏怖が崇拝に変貌するのに時間はかからなかった。
メディアは、Aの死刑執行を大々的に報じ、世間は大騒ぎだった。
しかし、真実は違う。
拘置所の中で、Aは今も確実に生きており、所員達からは神の如くあがめられているのだった。
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